歩いて、読む。

日々の雑感。ときどき、ちょっと文学。

本当に読みたい『方丈記』

 鴨長明方丈記』は高校古典の教科書では定番作品です。とはいえ、採録されているのは冒頭部や五つの災厄が中心です。それ以外の部分では、日野山での閑居の様を記した部分が取り上げられるくらいでしょうか。もちろんこれらは名文と呼ぶにふさわしいと思いますが、一方で鴨長明が特別に達観した人物だからこその文章であるとの印象を与えかねないのではないかと危惧します。

 個人的には日野山の閑居の様を記した後の部分が好きです。「夫れ、人の友とあるものは、…」から始まる部分は、精神的な自由を確保するのに妨げとなることは、昔も今も変わらないことを思い知らされます。長明と私たちの多くとの大きな違いは、出家しているか否かという点であり、人との関わりの中であれこれと煩わしさを感じる心は同じではないかと思うのです。

 私にはとうてい長明のように生きることはできませんが、『方丈記』を読むことで、現在の自分の生きづらさがどこから生じているのかを気付かせてくれます。そして、自分の心が安らかであることが大切であること、そのためには自分自身で工夫することが必要であることを教えられます。その工夫がないから、私はイライラしがちなのですが。