歩いて、読む。

日々の雑感。ときどき、ちょっと文学。

平家物語と出会い、平家物語で出会う。

 昨年の秋以降、『平家物語』を繰り返し読んでいます。新潮古典集成の新装版がお気に入りです。平家物語は中学、高校と授業で習いましたが、高校時代に習ったことは全く記憶がありません。中学時代の授業では、平家物語をとおして無常観を学び、これを端緒として『方丈記』、『徒然草』と学んでいきました。平家物語に限らず、高校の古典の授業に関する記憶は全くありません。なぜでしょう?それでも、大学では中世文学をしたいと思って進学したのは、間違いなく中学校での学びが影響したのでしょう。やはり、学校での学びを、受験のための手段に矮小化してはいけません。

 若い頃は、平家物語はぶっきらぼうで、不親切な印象を受けていました。しかし、今は、そういう叙述だからこそ伝えられる真実があると確信しています。一人の人間が生きて、死んでいくということはとても大変なことなのだけれども、悠久の自然から見れば、一人の人間が生きて、死ぬとはこの程度のことなのだ、と教えられる気がします。かといって、自暴自棄になることもなく、むしろ精一杯生きようという気持ちが静かににじみ出します。これによって、私は、生きることも、死ぬことも自然と受け入れられる気がするのです。

 私の祖父の本棚に、小学館の古典全集の『平家物語』があったことがずっと鮮明に記憶に残っています。祖父もいろいろと面倒なことを引き受けて生きた人でした。そんな祖父が『平家物語』を読み、自らの生を「これでよかったのだ」と思うことができたとしたら、これ以上の救済はないと思います。

 無口であった祖父と出会えたようなきもちです。