歩いて、読む。

日々の雑感。ときどき、ちょっと文学。

異世代をつなぐもの

 鳥取大学で国文学及び民俗学の研究をしていらっしゃった野津龍先生の著書『子どものための鳥取の伝説』を久しぶりに読みました。この本は1979年に出版されたもので、小学校で購入希望を取りまとめられた記憶があります。湖山長者の話など懐かしく読み返しました。その中に、鳥取市河原町周辺に残る在原行平の伝承が掲載されていましたが、この地域に伝わる様々な伝承が一つになったような話で、民間伝承が持つ特徴を確認することができました。

 この本は私が小学生の頃は図書館でも人気の本であり、借りるのに順番待ちをしなければならないほどでした。ところが、現在は書店で販売されておらず、図書館の蔵書にもない学校も多いようです。そういう事情もあってか30代ともなると、この本を知らない人も多いようです。私のリクエストに応えてこの本を県立図書館から取り寄せてくださった図書館司書の方は鳥取県外のご出身です。私が、「野津先生の『こどものための…』」と照会したところ、「ああ、仏像の写真が載ったオレンジ色の表紙の本ですね」との返事。どうして知っているのか尋ねると、鳥取で暮らすことになり、鳥取の文化を知るために読んだ本の中の1冊であるとのこと。私は嬉しくて感激しました。

 普段は関心を払ってもいない地元の文化について、県外の人が興味を持ってくれることはとても嬉しいことです。一方で、世代をこえて受け継がれてきた地域の文化が失われつつあるという現実もあります。野津先生のように、次世代に地域の文化を伝えられる有効な方法としてどのようなことがあるだろうかと考えさせられます。また、鳥取大学には「地域学部」がありますが、文化に関しては教育学部だった頃の方が地域に根差した研究がされていた面もあると思われてなりまでん。私は、私の責任において、私のやり方で地元の伝説の伝承に関わっていきたいと思います。