歩いて、読む。

日々の雑感。ときどき、ちょっと文学。

文学・国語

自分の勘を信じて

1ヶ月半かけて漱石の『こころ』を読んできましたが、いよいよ学習のまとめです。生徒たちも、なぜ「K」や「先生」は死を選んだのかということに関心が向くところです。これについては、多くの研究者たちがさまざまな見解を述べています。私は日本の明治と…

文学を語れる嬉しさ

研修で上京したのを機に大学時代の恩師を訪ねました。体調がすぐれないように伺っていたので、あまり長居しないようにしよう(1時間でおいとましよう)と思っていたのに、気がついたら3時間も話しつづけていました。本当は、これから取り組もうと考えてい…

小説教材の難しさ

授業で小説を読むとき、「難しいなあ」と感じることがいくつかある中で、最も課題となっているのは語彙力です。評論文であれば、ある表現の説明をするときにせよ要旨をまとめるときにせよ、基本的には本文中の語句で述べることができます。ところが小説の場…

ノーベル賞といえば

ノーベル賞が話題になる頃、「今年こそは村上春樹が文学賞を受賞するのでは」と取り上げられるのはもはや恒例行事のようになってしまっています。ハルキストと呼ばれる方々の心中はどのようなものでしょうか。 国語科教員のうち、国語科教育を専攻した人には…

古事談を通読して

『新注古事談』(笠間書院)を読みました。これまでは、他の説話集との比較をする際に該当する説話を読んだだけで、通読したのは初めてです。説話というよりも、挿話的なものがかなりあって、しかもそれらに興味をそそられます。歴史や古典文学に関心がある…

漱石の『こころ』を読むにあたって

夏目漱石の『こころ』は高等学校の現代文の定番教材です。私はこの小説を授業で読むのが恐いのです。教員となって初めて授業を受け持った生徒とともに、『こころ』を読みました。その生徒たちのうちの一人が、大学進学後、自ら命を絶ちました。その枕元には…

改めて自分の仕事の意義を考える

中学校、高等学校の国語科教科書に採録される古典文学作品には限りがあります。また、採録されたとしても作品のごく一部に過ぎません。例えば、『平家物語』については、後半部分がほとんどで、清盛存命中の部分はまず出てきません。俊寛僧都が鬼界ヶ島に流…

『どこから行っても遠い町』

川上弘美さんの小説『どこから行っても遠い町』は何度読んでも不思議な小説です。作中人物はさまざま境遇、年代の人物であり、自分自身との共通点は見出せないにもかかわらず、あたかも自分が体験しているかのように、身体や心が反応するのです。決して作中…

野分のまたの日に

秋の台風がやって来ると、『枕草子』の「野分のまたの日こそ…」で始まる章段を思い出します。 作者の着眼点や美意識に読者の感受性を刺激されることは間違いないのですが、現代人には「をかし」と評するのはある種のためらいを禁じ得ません。身の回りで被害…

行平と八上羽子板

1935年に板祐生さんが著した「山陰の郷土玩具概見」には、「八上羽子板」のいわれを伝える伝説が紹介されていることは、先日記したとおりです。この伝説では、八上羽子板作り方を伝えたのは在原行平であるとしています。 行平は、強賊を討伐せよとの文徳天皇…

文学の専門性と国語という科目

高校生に「文学とはどのようなものですか」と尋ねてみました。予測したとおり、生徒たちにとっても難問であったようで、ずいぶん考え込んで、結局のところ定義できませんでした。 学校のカリキュラムにある教科のなかで、国語ほど、大学で専門的に学ぶことと…

読書感想文の楽しみ

夏休みの宿題の定番ともいえる読書感想文は、多くの生徒にとっては特に億劫に感じるもののようです。インターネットには、様々な読書感想文対策のwebページがありますが、それは答えを自分の外に求めようとする思考様式を反映しているように思われます。 そ…

在原行平と八上羽子板

鳥取県には在原行平にまつわる伝説がいくつかあります。その中には、記念物がなくなるとともに伝承されなくなったと思われるものもあることは、先日も申し上げたとおりです。 板祐生さん(1889-1956)は鳥取県西部の現南部町に生まれ、教師として生涯を過ご…

用語によるイメージ 災害文学?

昨年は鴨長明没後800年の節目の年であったためか、長明や『方丈記』に関する一般向けの書物がいくつか出版されました。その中で、「方丈記は『災害文学』である」という説明がなされているものがあって、現在はそういう捉え方が主流なのかな?と疑問に思いま…

ライトノベルも読んでみる

「読書はあまりしないけど、ラノベなら読みます」という高校生は案外多いようです。「ラノベ」とは「ライトノベル」の略称なのだそうです。学校の図書館の蔵書にもあり、司書さんいわく、「教科書に出てくるような作家の作品も読んでもらいたいが、その入り…

因幡万葉歴史館 大伴家持生誕1300年を前にして

かつて因幡国庁があった鳥取市国府町は因幡一宮の宇倍神社をはじめ、彩色壁画で知られる梶山古墳など、古代のロマンに溢れる地域です。私自身も子どものころから今日にいたるまで慣れ親しんだ地域でもあります。 その国府町に「因幡万葉歴史館」があります。…

八上姫を訪ねて

鳥取は「因幡の白兎」の伝説の地としてもよく知られています。兎が「ワニ」を騙してたどり着いたという海岸は、白兎海岸と呼ばれ、鳥取県東部の主要な観光地の一つとなっています。 『古事記』では大国主命に助けられた白兎は、大国主命が美女として有名であ…

本当に読みたい『方丈記』

鴨長明『方丈記』は高校古典の教科書では定番作品です。とはいえ、採録されているのは冒頭部や五つの災厄が中心です。それ以外の部分では、日野山での閑居の様を記した部分が取り上げられるくらいでしょうか。もちろんこれらは名文と呼ぶにふさわしいと思い…

源平盛衰記を身近に

中世の古典文学作品を読んでいると、注釈に「『源平盛衰記』には…」などとよく記されています。落語の素材となるなど、名前はよく聞くのに、翻刻されたものは入手しづらい作品です。現代語訳だけのものなどは見かけますが、同じ軍記物語である『平家物語』と…

清盛塚を訪ねて

宮島には、「清盛塚」と呼ばれる経塚があります。清盛が平家一族の繁栄を願い一字一石経(教典の一文字を一つの小石に書き記したもの)を埋めたと言われているようです。発掘した際には、平安時代のものとみられる銅製の経筒、甕、刀片、中国宋代の白磁の合…

厳島と平家物語

厳島と平家物語といえば、なんと言っても厳島神社です。そして、平清盛との関わりの深さもよく知られているところです。 厳島神社の中には、清盛のほかにも平家物語の登場人物にゆかりのあるものがあります。ここでは、平康頼にゆかりのあるものを紹介します…

平家物語と出会い、平家物語で出会う。

昨年の秋以降、『平家物語』を繰り返し読んでいます。新潮古典集成の新装版がお気に入りです。平家物語は中学、高校と授業で習いましたが、高校時代に習ったことは全く記憶がありません。中学時代の授業では、平家物語をとおして無常観を学び、これを端緒と…

タヌキにばかされた話

大学の卒論を鴨長明で書いたということもあり、人生の節目や行き詰まりを感じたとき、日野山の草庵跡を訪ねます。最近では今年の2月末に行きました。京都市営地下鉄の石田駅ができてから、日野へは随分行きやすくなりました。 今回はついでに日野岳山頂やパ…

異世代をつなぐもの

鳥取大学で国文学及び民俗学の研究をしていらっしゃった野津龍先生の著書『子どものための鳥取の伝説』を久しぶりに読みました。この本は1979年に出版されたもので、小学校で購入希望を取りまとめられた記憶があります。湖山長者の話など懐かしく読み返しま…

初老に読む『山月記』

中島敦の『山月記』を久々にじっくりと読みました。若い頃は、主人公の李徴にどっぷりと同化して読んだものです。初老を過ぎた現在、私の関心をひいたのは、李徴の執着と自嘲癖です。李徴は自分の詩を世の中に残すことに執着をみせます。それは、詩人として…

鳥取の行平伝説をめぐる現状

現在、私は鳥取県東部地区の在原行平に関する伝承に関心を持っています。Webページにもいくつか紹介されていて、その中には地元の人間も知らなかったものもあります。 鳥取市役所の公式Webページにも用瀬町の行平伝説が紹介されていました。その解説文中に『…