歩いて、読む。

日々の雑感。ときどき、ちょっと文学。

芸能の可能性

記事を更新しない状態がしばらく続いてしまいました。 昨年度は鳥取県東部に残る在原行平に関する伝説について調べてきました。その一部は古典文学に関心のある高校生とともに、伝説の意味や背景について考察しました。 以前に、鳥取に伝わる『曾我物語』の…

入試問題の解答例は公表すべきだ

25日から国公立大学の前期日程試験が始まります。国公立大学への出願のころから、受験大学の過去問を解いてくる生徒の指導に終われます。過去問を集めた「赤本」は有名ですが、それに掲載されている解答例はあくまで例でしかなく、どこまでの内容が答案と…

なぜ、姉妹を愛したのか? 因幡の行平伝説

この1年間、因幡国の国司であった在原行平の伝説を集め、分析してきました。一部は古典に関心を持つ生徒も巻き込んで、伝説の主題や行平との関わりについて考察をしてきました。 謡曲「松風」と重複する伝説が鳥取にも残っています。因幡に赴任する途上、須…

書道パフォーマンスと表現

高校生の書道パフォーマンスを観ました。大型ショッピングモールの新春イベントとして数年前から行われていたのですが、私はこれが初めてです。率直に言って、踊りや掛け声の必然性が感じられず、ただ、表現者の意図ばかりが目についてしまうような印象を受…

この世界の片隅に

アニメーション映画『この世界の片隅に』を観ました。予約をして、9月の発売日当日にDVDを購入していたものです。「いまさら、何を」とおっしゃる方も多いことでしょう。 この半年間、生徒とともに戦争平和について学び、考えてきました。広島で被爆の体…

実践の理論と哲学

今月の18日.、19日に日本文学協会(日文協)の大会に参加しました。18日に行われたシンポジウムでは、文芸教育研究協議会(以下、文芸研)の理念、理論が報告され、日文協の〈第三項〉理論のとの相違点や共通点が検討されました。日文協の会員としては日の浅…

自分の勘を信じて

1ヶ月半かけて漱石の『こころ』を読んできましたが、いよいよ学習のまとめです。生徒たちも、なぜ「K」や「先生」は死を選んだのかということに関心が向くところです。これについては、多くの研究者たちがさまざまな見解を述べています。私は日本の明治と…

芸術の秋

研修で上京した際、上野の国立西洋美術館に行き、「北斎とジャポニスム」を観ました。金曜日と土曜日は午後8時まで開館と聞いたので、研修後に行くことができました。 前回、西洋美術館を訪れた時は閉館中であったため、柵の側でぴょんぴょんと飛び跳ねて、…

文学を語れる嬉しさ

研修で上京したのを機に大学時代の恩師を訪ねました。体調がすぐれないように伺っていたので、あまり長居しないようにしよう(1時間でおいとましよう)と思っていたのに、気がついたら3時間も話しつづけていました。本当は、これから取り組もうと考えてい…

小説教材の難しさ

授業で小説を読むとき、「難しいなあ」と感じることがいくつかある中で、最も課題となっているのは語彙力です。評論文であれば、ある表現の説明をするときにせよ要旨をまとめるときにせよ、基本的には本文中の語句で述べることができます。ところが小説の場…

池田亀鑑先生と古さとのことば

池田亀鑑先生は鳥取県西部のご出身です。日本の古典文学に関心のある人なら誰でもその名と業績を知っているところです。大学に入学して間もない頃、私が鳥取出身であることを知った教授(万葉集の講義をされていた)が、池田先生の業績やご苦労、国文学に対…

ノーベル賞といえば

ノーベル賞が話題になる頃、「今年こそは村上春樹が文学賞を受賞するのでは」と取り上げられるのはもはや恒例行事のようになってしまっています。ハルキストと呼ばれる方々の心中はどのようなものでしょうか。 国語科教員のうち、国語科教育を専攻した人には…

古事談を通読して

『新注古事談』(笠間書院)を読みました。これまでは、他の説話集との比較をする際に該当する説話を読んだだけで、通読したのは初めてです。説話というよりも、挿話的なものがかなりあって、しかもそれらに興味をそそられます。歴史や古典文学に関心がある…

漱石の『こころ』を読むにあたって

夏目漱石の『こころ』は高等学校の現代文の定番教材です。私はこの小説を授業で読むのが恐いのです。教員となって初めて授業を受け持った生徒とともに、『こころ』を読みました。その生徒たちのうちの一人が、大学進学後、自ら命を絶ちました。その枕元には…

改めて自分の仕事の意義を考える

中学校、高等学校の国語科教科書に採録される古典文学作品には限りがあります。また、採録されたとしても作品のごく一部に過ぎません。例えば、『平家物語』については、後半部分がほとんどで、清盛存命中の部分はまず出てきません。俊寛僧都が鬼界ヶ島に流…

『どこから行っても遠い町』

川上弘美さんの小説『どこから行っても遠い町』は何度読んでも不思議な小説です。作中人物はさまざま境遇、年代の人物であり、自分自身との共通点は見出せないにもかかわらず、あたかも自分が体験しているかのように、身体や心が反応するのです。決して作中…

読書を演出するもの

秋分の日も過ぎ、秋の気配が深まるこの頃は、夜に虫の声を聞きながら読書にふけるのは、この上なく心地よいものです。窓を開け、虫の声とともに流れて来る冷気もまた秋の風情を感じさせるものです。 海辺に近い学校に勤務したことがきっかけで、釣りが好きに…

原爆の体験講話を聴いて

広島で原爆を体験した方の講話を聴くことができました。私自身は20代の時に一度聴いて以来のことになります。その時以上に心を揺さぶられるように感じたのは、自分にとって大切だと思う存在が増えたためでしょうか。それとも、時代にきな臭いものを感じる…

高校生のコピペレポートから考える

高校生に夏季休業中の課題としてレポートの提出を求めました。テーマは研修旅行での研修内容に即して自分で設定し、A4版レポート用紙2枚以上、二つ以上の資料を用いるということを条件としていました。 結果は、「コピペ」で字数を埋めたものがほとんどで、…

最後の米

今日、コイン精米機で米をつきました。我が家で、こうして、玄米を精米して食べるのもおそらくこれが最後になると思われます。 私の両親筋も数年前に稲作をやめました。そのときの「退職してからでもいいから、お前が米を作ってくれたら…」と遠慮がちに言っ…

行平と八上羽子板

1935年に板祐生さんが著した「山陰の郷土玩具概見」には、「八上羽子板」のいわれを伝える伝説が紹介されていることは、先日記したとおりです。この伝説では、八上羽子板作り方を伝えたのは在原行平であるとしています。 行平は、強賊を討伐せよとの文徳天皇…

むしの知らせ

大学時代に同じゼミに所属していた同級生が亡くなったと聞き、気持ちが沈んでいます。今夏はなぜか大学時代が思い出されたのは、むしの知らせというやつだったのかも知れません。 彼女の卒論は『宇治拾遺物語』の笑いに関するものでした。 秋の気配が漂い始…

二十世紀梨

鳥取の名産品として思い浮かべるもののひとつが、二十世紀梨です。ハウス栽培のものは8月上旬に店先に並びますが、地物は8月下旬から出荷が始まります。通勤経路上にある梨の選果場にも、人や大型トラックが往来し、にわかに活気を呈しています。 二十世紀…

短くなる夏休みと探究活動

今年の夏は、珍しく、県外の研究会に参加することも、旅行に行くこともありませんでした。そのおかげもあって、例年になく時間的なゆとりがあり、これまでほとんど見向きもしなかった、故郷の文化や風土が持つ価値に気付くこともできました。そして、伝説や…

在原行平と八上羽子板

鳥取県には在原行平にまつわる伝説がいくつかあります。その中には、記念物がなくなるとともに伝承されなくなったと思われるものもあることは、先日も申し上げたとおりです。 板祐生さん(1889-1956)は鳥取県西部の現南部町に生まれ、教師として生涯を過ご…

用語によるイメージ 災害文学?

昨年は鴨長明没後800年の節目の年であったためか、長明や『方丈記』に関する一般向けの書物がいくつか出版されました。その中で、「方丈記は『災害文学』である」という説明がなされているものがあって、現在はそういう捉え方が主流なのかな?と疑問に思いま…

ライトノベルも読んでみる

「読書はあまりしないけど、ラノベなら読みます」という高校生は案外多いようです。「ラノベ」とは「ライトノベル」の略称なのだそうです。学校の図書館の蔵書にもあり、司書さんいわく、「教科書に出てくるような作家の作品も読んでもらいたいが、その入り…

因幡万葉歴史館 大伴家持生誕1300年を前にして

かつて因幡国庁があった鳥取市国府町は因幡一宮の宇倍神社をはじめ、彩色壁画で知られる梶山古墳など、古代のロマンに溢れる地域です。私自身も子どものころから今日にいたるまで慣れ親しんだ地域でもあります。 その国府町に「因幡万葉歴史館」があります。…

長崎平和祈念式典に思う

今日は長崎で平和祈念式典が行われました。今年の「平和への誓い」は初めて公募によって選出された方によって行われたということです。テレビの報道で、その方は、原爆で亡くなった姉が夢に現れ、原爆の悲劇を伝えるのがあなたの仕事だと訴えるのだとおっし…

先輩の道案内

就職して最初に赴任した職場には旅行好きな先輩が多く、飲み会での話題はつねに旅の経験談でした。そして、旅の行き先は必ず文学が関係していました。先輩たちの話に刺激されて、二十代には夏期休暇を利用して奈良をよく訪ねていました。 とにかく、お金をか…