歩いて、読む。

日々の雑感。ときどき、ちょっと文学。

自分の勘を信じて

 1ヶ月半かけて漱石の『こころ』を読んできましたが、いよいよ学習のまとめです。生徒たちも、なぜ「K」や「先生」は死を選んだのかということに関心が向くところです。これについては、多くの研究者たちがさまざまな見解を述べています。私は日本の明治という時代の空気を肌で感じた者でなければ、真に理解するのは(理屈としても、心情としてもストンと胸に落ちる感じがするのは)困難だと感じています。

 今回は単純に、その是非は別問題として、死を選ばざるを得なかったほどの生きづらさに着目してみることにしました。生徒たちは、生きづらさという感覚は程度の違いこそあれ感じているようで、その感覚通して「先生」や「K」の心に迫っていこうとしています。「明治の精神」などと説明するところから迫っていくよりもはるかに食いつきがよく、主体的に考えようとしています。

 教材研究はとても大事で、最新の研究成果に敏感であることも必要です。その一方で、目の前の生徒の生活や関心に寄り添い、それに応じた授業が組み立てられることも、教師の力として必要です。教師の勘を信じて、指導書などから離れてみることも大切です。

 今回の私の迫り方も、厳密な読みとしてはご不満に思われる方も多くいらっしゃるとは思いますが、少なくとも、私の目の前の生徒に変容がみられたことは確かです。今日の放課後も、何人かの生徒が質問に来ました。作品や漱石に関心を持ったようです。教師にとってこれほど嬉しいことはありません。